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コラム:2025年の気候危機:注目すべき5つのポイント
2025/05/30

2025年も早くも半年が過ぎようとしています。これまでの取り組みを振り返り、改めて地球環境への意識を高めるタイミングです。今回は、国連(United Nations)が発表した「2025年に注目すべき5つの気候危機のポイント」を再確認し、私たち一人ひとりが持続可能な社会の実現に向けて、今何をすべきかを考えていきましょう。

2025年の気候危機:注目すべき5つのポイント(UN News より

2025年11月、ブラジル・アマゾンの都市ベレンで開催予定の国連気候変動会議(COP30)は、地球規模の気候危機への対応を加速させる重要な場となります。しかし、それまでの間にも、プラスチック汚染の深刻化や持続可能な経済への移行資金の確保など、さまざまな課題への取り組みが求められています。
この記事では、2025年に特に注目すべき気候変動に関する5つのポイントを解説します。

1. 「1.5℃目標」を守れるか?

「1.5℃目標を守れ」というスローガンは、国連が数年来掲げている気候行動の指針です。これは、産業革命以前の水準と比べて地球の平均気温上昇を1.5℃以内に抑えることを目標にしています。科学的なコンセンサスによれば、この目標を達成できなければ、特に海面上昇の影響を受けやすい島嶼国をはじめとする「フロントライン国家」に壊滅的な被害が及ぶとされています。

COP30では、温室効果ガスの排出削減(緩和策)が主要な議題となる予定です。各国は、現行の削減目標をさらに引き上げた形で会議に臨むことが期待されています。これは、現状の取り組みが地球温暖化の抑制には不十分であるという認識の表れであり、2015年のパリ協定で合意された「5年ごとの目標引き上げ」の一環です。なお、前回の見直しは2021年のグラスゴー会議(COP26)で行われましたが、新型コロナウイルスの影響で1年延期されました。

2. 自然の力を守る

COP30がブラジル・アマゾンの熱帯雨林地域で開催されることは象徴的な意味を持ちます。1992年にリオデジャネイロで開催された「地球サミット」以来、気候変動・生物多様性・砂漠化の3つの国際条約が誕生し、地球環境保護の歴史が刻まれてきました。

アマゾンの熱帯雨林は、膨大な量の二酸化炭素を吸収・蓄積する「炭素の貯蔵庫(カーボンシンク)」として地球温暖化の抑制に欠かせない存在です。しかし、違法伐採や開発行為によってその機能が脅かされており、2024年から始まった国連主導の保護活動は、2025年2月にローマで再開される生物多様性会議でさらなる議論が進められる予定です。

3. 誰が負担するのか?気候資金の課題

気候危機への対応を進める上で、資金調達は長年の難題です。途上国は「先進国がより多くの資金を拠出すべきだ」と主張し、一方で先進国側は「中国のような大規模な温室効果ガス排出国も負担すべきだ」と反論しています。

2024年11月にアゼルバイジャンのバクーで開催されたCOP29では、途上国向けの気候資金を2035年までに年間3000億ドルに増額するという合意が成立し、一歩前進しました。しかし、専門家は、気候危機に適応するためには少なくとも年間1.3兆ドルが必要だと指摘しており、資金不足は依然として深刻です。

2025年6月末にスペインで予定されている「持続可能な開発のための資金調達会議」は、10年に一度の大規模会議であり、国際金融の枠組みを根本的に見直す大きなチャンスとなります。環境税や炭素価格制度、補助金のあり方など、気候資金を確保するための新たな仕組みが議論される見込みです。

4. 国際法の中での気候変動

2024年12月、国際司法裁判所(ICJ)が気候変動に関する各国の法的責任について審理を開始したことは、国際法上の歴史的な出来事として注目されました。特に、台風や高潮といった極端な気象現象に悩まされている南太平洋の島国バヌアツが、各国の法的義務を明確化するために意見を求めたことがきっかけです。

この公聴会には、バヌアツや太平洋諸国をはじめ、米国や中国などの主要国、合計96カ国と11の地域機関が参加しました。ICJの勧告的意見は法的拘束力はありませんが、今後の国際的な気候変動法の枠組みを形作る上で重要な指針となると期待されています。

5. プラスチック汚染問題の行方

世界的なプラスチック汚染問題への対応も大きな課題です。2024年11月、韓国・釜山で開催された国連主導の会議(プラスチック汚染に関する国際交渉の第5回会合)では、法的拘束力のある国際条約の策定に向けて前進が見られました。この条約は、2022年の国連環境総会で採択された決議に基づくものです。

合意には、以下の3つの主要分野の調整が必要です。

◆プラスチック製品と化学物質の管理
◆持続可能な生産と消費の促進
◆資金調達の確保

各国は意見の隔たりを埋め、プラスチックのライフサイクル全体を対象とする包括的な条約の策定を目指しています。国連環境計画(UNEP)のインガー・アンダーセン事務局長は「世界は依然としてプラスチック汚染を終わらせたいと強く望んでいます。問題に正面から取り組むため、各国が協力し、実効性のある枠組みを作り上げることが必要です」と呼びかけています。

まとめ

2025年は、気候変動問題の分岐点となる重要な年です。COP30をはじめとする国際会議や交渉の場で、1.5℃目標の維持、自然環境の保護、気候資金の確保、法的枠組みの整備、プラスチック汚染対策といった課題への取り組みが進むことが期待されます。これらの動きを注視し、持続可能な未来の実現に向けた行動を一人ひとりが意識することが求められています。