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コラム:【世界環境デー2025】プラスチック汚染を終わらせるために今できることとは?
2025/06/06

世界環境デーとは?

世界環境デー(World Environment Day)は、1972年に国連総会で制定され、翌1973年から毎年6月5日に開催されている国際的な環境啓発デーです。国連環境計画(UNEP)が主導し、毎年テーマを定めて、地球規模の環境問題に対する意識向上と具体的な行動を促すことを目的としています。

2025年のテーマは「プラスチック汚染を終わらせる(End Plastic Pollution)」。ホスト国は韓国で、開催地は済州(チェジュ)です。このテーマは、世界中で深刻化する使い捨てプラスチックの環境負荷に対し、具体的な解決策を打ち出すきっかけとして選ばれました。

プラスチック汚染の現状


世界規模の問題

現在、世界で生産されているプラスチックは年間約4億3000万トン(OECD 2022年推計)にのぼります。その大半が使い捨てされ、わずか9%程度しかリサイクルされていません。その他は焼却、埋立て、または適切に処理されずに自然環境に放出されています。

とくに海洋への流出が大きな問題で、国連環境計画によると年間約1100万トン〜2300万トンのプラスチックごみが海に流れ込んでいるとされています。このままでは、2050年には海中のプラスチックの量が魚の量を上回るという試算もあります。


健康や生態系への影響

プラスチックごみは、分解されることなく細かく砕け、マイクロプラスチックとして自然環境や人間の生活圏に広がります。近年の研究では、マイクロプラスチックが人間の血液、肺、胎盤、そして母乳の中からも検出されており、その健康影響について懸念が高まっています。

また、海洋生物がプラスチックを誤飲するケースも多発しており、生態系全体への影響も深刻です。

世界環境デーとグローバル・プラスチック条約

2025年の世界環境デーは、国際的な政策議論とも密接に関連しています。現在、国連では「グローバル・プラスチック条約(Global Plastics Treaty)」の制定に向けた交渉が進行中です。

この条約は、プラスチックの生産・設計・使用・廃棄のすべての段階で国際的な規制を設け、海洋汚染や温室効果ガス排出の削減を目指すものです。すでに2024年末までに複数回の国際交渉(INC:Intergovernmental Negotiating Committee)が行われ、2025年8月には最終的な合意文書の取りまとめが予定されています。


条約の主な議論点

・プラスチックの生産量抑制に関する数値目標の導入
・危険な化学物質を含むプラスチック製品の段階的廃止
・リサイクルや再利用のための国際的なインフラ整備支援
・企業責任の明確化と製品設計段階での持続可能性評価

このように、世界環境デーは条約交渉を盛り上げるための世論形成の場とも位置づけられており、各国の市民・企業・自治体に対して行動を求める重要なタイミングとなっています。


日本における取り組みと課題

日本は一人当たりのプラスチック使用量が世界的に見ても高く、2022年時点で約129kg/人/年という水準にあります。これはアメリカに次ぐ世界第2位です。

国内法制度

日本では2022年に「プラスチック資源循環促進法」が施行され、以下のような措置が導入されました。

・特定12製品(ストロー、フォーク、スプーンなど)の使用削減努力義務
・事業者に対するリデュース(削減)・リユース(再利用)・リサイクル(再資源化)の推進
・設計段階から再資源化を前提とした製品設計を行う「デザイン・フォー・リサイクル」の推奨

    また、環境省は自治体や企業と連携し、リユース容器の導入や市民啓発活動にも取り組んでいます。

    地方自治体の先進事例

    ・京都市:リユース食器システムの導入を進め、イベント時のごみ排出量を削減
    ・石垣市(沖縄県):観光地におけるプラスチック製品の提供自粛と代替素材導入を推進


      日本企業の取り組み

      国内の大手企業も脱プラスチックに取り組んでおり、PETボトルの再利用率向上、バイオマス素材への転換、詰め替えパッケージの普及などが進んでいます。ただし、これらの施策はまだ一部にとどまっており、製造・小売業界全体での構造的な変革が求められています。

      私たちができること:個人と企業のアクション


      個人としての行動

      ・マイボトル・マイバッグを持ち歩き、使い捨てを減らす
      ・詰め替え商品やバルク販売を活用し、パッケージごみを減らす
      ・プラスチック製品の購入時には再生素材や代替素材を選ぶ


      企業としてのアクション

      ・製品や包装の素材を見直し、リデュース・リユース設計を導入
      ・回収・再資源化スキームの構築と透明な情報開示
      ・サプライチェーン全体での循環型経済の構築
      ・国際条約や国内法への準拠と、それを超える自主目標の設定

      循環型社会へ向けて

      プラスチック問題は単なる廃棄物処理の課題ではなく、気候変動や資源枯渇、健康被害と深く関係しています。大量生産・大量消費から脱却し、製品設計やライフサイクル全体を見直すサーキュラーエコノミー(循環経済)への転換が求められています。

      国際的には、循環型経済を導入することで2050年までに廃棄物コストや健康被害を含む社会的損失を約1兆ドル以上削減できるという試算もあります。

      まとめ:世界環境デーを「行動のきっかけ」に

      2025年の世界環境デーは、「プラスチック汚染を終わらせる」という明確なメッセージのもと、世界中の政府・企業・市民に対して行動を促す重要な機会です。プラスチック問題は私たち全員に関係するグローバルな課題であり、その解決には多層的な取り組みが必要です。

      まずは身近なところから、使い捨てを減らす選択を始めてみませんか?「#BeatPlasticPollution」のハッシュタグとともに、世界中の行動の輪に加わり、未来世代に誇れる社会づくりに参加しましょう。