コラム:【2025年版】中国がEV覇権を握った理由と日本企業への示唆
【2025年版】中国がEV覇権を握った理由と日本企業への示唆

1. EVが“当たり前”になった中国市場
広州市の配車ドライバー呂雲峰さんは「ガソリン車は高い。EVなら維持費が4分の1」と語ります。2024年、中国で売れた新車のほぼ半数が電気自動車(EV)した。かつて“高級品”と見なされたEVは、節約と実用の象徴に変わりつつあります。
2. 国家主導の長期計画と巨額投資
中国政府は2001年にEV育成を五カ年計画へ初めて組み込み、2009年以降は累計約2,310億ドル(米CSIS試算)を投じました。元科技部長・万鋼氏の「内燃機関では外国勢に勝てない」という提言を契機に、産官学が一斉にEVへシフト。リチウム調達から車載ソフトまで国内完結型サプライチェーンを築く決定打となりました。
3. 圧倒的コスト競争力を生む三本柱
中国では、購入補助やナンバープレート無償化などの優遇策、都市部を中心とした世界最大の急速充電ネットワーク、そしてCATLが握るバッテリー供給体制が三位一体で機能しています。広州の呂さんは「400km走行あたり約150元を節約できる」と話し、価格面のメリットが普及を後押ししています。
4. 新興メーカーが牽引する“多機能×低価格”革命
BYDは2025年に世界EV販売でテスラを逆転、XPengは自動運転支援や音声操作を標準搭載した「Mona Max」を約2万ドルで投入し、NIOは3分で完了するバッテリースワップ技術を普及。熾烈な国内競争がイノベーションとコスト削減を両立し、若年層の“初めてのマイカー”需要まで取り込んでいます。
5. 海外拡大と保護主義の壁
EU・米国・カナダは中国製EVに高関税を課し自国産業を保護する一方、英国は関税を据え置き。2025年春にはXPeng「G6」とBYD「Dolphin Surf」が2万6千ドル前後で発売されました。各国が2030年前後にガソリン車販売禁止を掲げるなか、中国勢は“駆け込み需要”を狙っています。
6. データ安全保障への懸念
英情報機関元長官は「中国EVは走るコンピューター」と警戒しますが、BYDは「データは現地サーバーで国際基準を満たす」と反論。ファーウェイやTikTokを巡る議論と同様、サイバーセキュリティと透明性が世界市場での成長を左右します。
7. 日本企業・自治体が取るべき戦略
◆バッテリー調達の多角化:リサイクル技術と国内セル生産で中国依存を低減
◆インフラ整備の加速:都市急速充電と郊外ハブ型を併用し、“充電格差”を解消
◆高付加価値領域への集中:車載OS、OTAアップデート、二次利用ビジネスで差別化
◆日中協業の再構築:共同開発でコスト優位を取り込みつつ、データ主権を確保
まとめ
中国は国家戦略×補助金×産業集積でEV覇権を確立し、世界市場でも存在感を高めています。日本が競争力を維持するには、高付加価値サービスと安全保障への対応を軸に、急速に変化するEVエコシステムへ柔軟に適応することが不可欠です。