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コラム:AI利用で年間最大8,000万トンのCO2排出──NY市に匹敵する規模と研究が指摘
2025/12/19

2025年のAIが排出するCO2はニューヨーク市全体と同規模──急拡大する環境負荷の実像

生成AIは、顧客体験の改善や自動化の推進など、多様な産業で採用が進む。2025年はChatGPTやGeminiといったAIサービスが一般利用まで拡大し、ITインフラ全体の稼働量も急増した。一方で、AIの環境負荷に対する懸念が世界的に高まっている。
12月18日に公表された最新研究は、2025年のAI関連電力消費に伴うCO2排出量が、ニューヨーク市1都市分の年間排出に相当する規模に達する可能性を示した。AIの急成長と環境負荷が並行する状況は、既存のデータセンター議論を超え、政策課題として浮上している。

 AI利用に伴うCO2排出──「最大8,000万トン」の推計

研究をまとめたのは、オランダの学者でDigiconomist創設者のアレックス・デ・ブリース=ガオ氏だ。彼は、AI利用に伴う排出量が年間最大8,000万トンに到達する可能性を示した。
これは世界の航空産業排出量の8%超に相当し、単一都市の比較ではニューヨーク市全体の排出量と同水準と推定されている。研究はテクノロジー企業の開示情報をもとに作成されたものであり、個別サービスの利用拡大が電力需要を押し上げている点に着目した。

同氏は、現状では環境コストが企業ではなく社会全体に転嫁されていると指摘し、「テクノロジー企業が利益を得ている以上、コストの一部を負担すべきではないか」と問題提起している。

水資源への影響──「7,650億リットル」使用との試算

研究が示したのはCO2だけではない。電力供給やシステム冷却に必要な水資源を含め、2025年のAI関連の水使用量は年間7,650億リットルに達する可能性があるとされた。これは世界のボトル飲料水需要の総量をすでに超えているという推計だ。

デ・ブリース=ガオ氏は、従来「データセンター全体」を対象に推計されていた水使用量を基準とすると、今回のAI関連水消費は3分の1以上高い水準となる可能性があると述べている。AIの普及による水需要は、気候変動や干ばつの影響を受ける地域においてリスク要因となり得るとの見方があり、水資源政策との調整が課題となる可能性がある。

IEAは「2030年までに電力消費が2倍」と警鐘

国際エネルギー機関(IEA)は2025年初頭、AIを含むデータセンターの電力消費が2030年までに2倍以上へ増加するとの見通しを示した。
IEAは、AI特化型データセンターの電力消費をアルミ製錬工場と同程度と表現し、「大規模な電力シフトが必要になる」と警告している。

データセンターの電力消費は地域的に偏在しており、米国が全体の約45%を占め、次いで中国が約25%、欧州が約15%という構図になっている。つまり、電力需要の大半が米中欧に集中しており、この偏在が送電網や燃料供給への負荷につながる可能性がある。

世界各国でデータセンター建設が加速

生成AIの拡大は、巨大データセンターの建設需要を押し上げている。研究者や環境団体の分析では、ハイパースケール級施設1つで、複数の国際空港に匹敵する排出量となる可能性が示されている。

英国では、100〜200件のデータセンター計画が存在すると推定されている。ノーサンバーランド州ブライスに整備される予定の施設では、年間18万トン超のCO2排出が見込まれ、24,000世帯以上分の年間排出量に相当する規模になると分析されている。

また、インドではデータセンター関連に300億ドル(約3〜4兆円)規模の投資が進みつつある。国家送電網が十分に安定しない場合、バックアップとして大規模なディーゼル発電システムが必要となる可能性が指摘され、KPMGはこれを「巨大なカーボン負債」と表現した。

これらは、AI関連インフラが「電力・水・土地・燃料」の複合的な政策課題として扱われ始めていることを示す。

Googleは削減努力を示す一方、課題も認める

Googleは2024年、データセンター起因のエネルギー排出量を12%削減したと公表した。一方で同社は、「気候目標の達成は、地域から世界まであらゆるレベルで従来以上に困難になっている」と説明し、「カーボンフリー電源技術の大規模導入が必要だが、展開が追いついていない」ことを課題として挙げた。

また、GoogleがAI「Gemini」に関する影響を開示した際、電力供給に必要な発電段階の水使用量が含まれていないとの指摘があり、環境情報の透明性について改善余地があるとされた。
研究者は、AI単独の環境負荷を測定するには、企業側により厳格な開示基準が必要になると述べている。

誰が負担するのか──社会的議論が始まる

AIの普及は企業価値を押し上げたが、電力、水、排出量などのコストは社会に転嫁されている、というのが研究者の主張だ。
デ・ブリース=ガオ氏は、「現状、環境コストは企業ではなく社会が払っている。それは公正か?」と問題を投げかける。

今後の議論は、以下に及ぶ可能性がある。

  • ◆カーボンプライシングの適用

  • 排出報告義務の強化

  • 水利用の開示制度

  • 地域ごとの設備規制

まとめ:技術進化と環境制約の両立へ

  • AIの成長は大規模インフラと不可分

  • 電力・水・排出量の負荷は2025年に急増

  • 国際機関は電力需要「2倍」を予測

  • データセンター建設は世界規模で加速

  • 開示制度と政策対応は追いついていない

AIは今後、通信、医療、行政、金融など社会インフラの領域へ拡張すると予想される。
技術のメリットを維持しつつ、排出削減と資源制約をどのように調整するかが大きな課題になる。
AIはもはや「便利なサービス」ではなく、社会がコストを配分しなければならない現実的な対象として認識され始めている。

今後は、企業の開示精度や政府の政策判断によって、AI技術と環境負荷のバランスが決まっていくことになるだろう。