コラム:韓国で42.5℃の記録的猛暑|原因と影響を解説
韓国で、これまでの国内記録を更新する猛暑が発生しました。2026年8月2日、南東部の慶尚南道梁山市(ヤンサン市)では、最高気温42.5℃を観測しました。韓国で気温が42℃を超えたのは、近代的な気象観測が始まって以来初めてです。
猛暑は一時的な暑さにとどまらず、温熱疾患や死亡例を発生させています。さらに、農作物への被害や電力需要の増加など、社会の幅広い分野への影響も懸念されています。
本記事では、韓国の記録的猛暑の状況と発生原因、今後求められる対策について解説します。
※本記事は2026年8月7日時点の公表情報に基づいています。
韓国・梁山市で観測史上最高の42.5℃を記録
韓国南東部に位置する梁山市では、2026年7月末から気温が急激に上昇しました。
- 7月31日:41.4℃
- 8月1日:41.6℃
- 8月2日:42.5℃
3日連続で41℃を超え、8月2日には韓国の観測史上最高気温となる42.5℃に達しました。これまでの国内最高記録は、2018年8月1日に江原道洪川郡で観測された41.0℃でした。
梁山市の観測装置については、韓国気象庁などが点検し、正常に作動していたことも確認されています。
猛暑は梁山市だけの問題ではありません。ソウルを含む韓国各地で高温と熱帯夜が続き、韓国政府や気象当局は、危険な時間帯の屋外活動・屋外作業の中止や休憩、高齢者などへの見守り、電力供給体制の点検を呼びかけました。
また、韓国野球委員会は観客の安全を考慮し、一部の試合を中止しています。
李在明大統領は、記録的な猛暑が続く状況を「事実上の国家的な気候災害」と位置付け、屋外労働者や高齢者などの安全確保、住宅や電力網などのインフラ改善を指示しました。
温熱疾患患者は2,400人を超える
記録的な高温は、人の健康にも深刻な影響を与えています。
韓国疾病管理庁によると、2026年5月15日から8月4日までに報告された温熱疾患患者は2,441人で、このうち温熱疾患による推定死亡者は21人でした。いずれも速報段階の暫定値です。
患者のうち65歳以上は825人で、全体の33.8%を占めました。推定死亡者21人のうち13人は80歳以上で、高齢者の割合が特に高くなっています。
発生場所別の人数は、次のとおりです。
- 屋外作業場:625人
- 田畑:324人
- 路上・道端:298人
- 住宅内:172人
80歳以上では、住宅内で発症した人の割合が全体の約3倍に上っています。
猛暑というと屋外での活動が注目されますが、住宅内でも室温管理が不十分な場合は大きなリスクになります。高齢者は体温調節機能が低下し、温熱疾患の初期症状に気付きにくい場合があります。
本人による対策だけでなく、家族や近隣住民などによる見守り、室温や冷房設備の作動状況の確認も必要です。
韓国の記録的猛暑はなぜ発生したのか
今回の猛暑は、一つの原因だけで発生したものではありません。韓国気象庁の分析では、複数の気象条件と地域の地形が重なったとされています。
北太平洋高気圧とチベット高気圧による「二重の高気圧」
朝鮮半島の大気中層から下層を北太平洋高気圧が覆い、その上空にはチベット高気圧が張り出しました。
上下の高気圧によって暖かい空気が地表付近にとどまりやすくなり、いわゆる熱ドームに近い状態が形成されました。
高気圧の下では下降気流が発生します。空気は下降すると圧縮されて温度が上がるため、晴天と強い日射が続くことで、地表付近に熱が蓄積しやすくなります。
山を越えた風によるフェーン現象
梁山市では、山地を越えて吹き下ろす風が高温で乾燥するフェーン現象も発生しました。
山を越えた空気は下降する過程で温められるため、風下側の気温を押し上げます。
梁山市は東・西・北側を山地に囲まれています。西風系の風が山を越えて吹き下ろす際の地形効果が加わり、局地的に気温が上がりやすい条件が重なりました。
少雨と強い日射
韓国気象庁によると、2026年7月の慶尚南道の降水量は68.0mmで、平年の21.9%にとどまりました。同地域では気象学的な干ばつも確認されています。
一般に土壌水分が少ない状態では、太陽のエネルギーが水分の蒸発に使われにくくなるため、地表や地表付近の空気が温まりやすくなります。
ただし、土壌の乾燥が梁山市の42.5℃という記録にどの程度寄与したかは、韓国気象庁の発表では示されていません。そのため、少雨と土壌乾燥は、高温を助長した可能性のある要因として捉える必要があります。
気候変動が猛暑のリスクを底上げ
個別の猛暑と気候変動の関係を判断するには、観測データを用いた専門的な原因分析が必要です。そのため、今回の42.5℃という記録を気候変動だけで説明することはできません。
一方、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、人為的な気候変動によって熱波の頻度と強度がすでに増加していると評価しています。
都市ではヒートアイランド現象が加わり、熱ストレスがさらに高まることも示されています。地球全体の平均気温が上昇した状態では、同じような気圧配置が生じた場合でも、より極端な高温に達しやすくなります。
猛暑が社会と経済に及ぼす影響
猛暑は健康問題だけでなく、産業や生活基盤にも連鎖的な影響をもたらします。
屋外労働者の安全
建設、運送、廃棄物収集、農業などの屋外作業では、気温に加えて直射日光や路面からの照り返しを受けます。
特にアスファルトやコンクリートに囲まれた場所では、気象観測で発表される気温よりも、作業者の周辺温度が高くなることがあります。
屋外作業を行う事業者には、次のような対策が必要です。
- 暑さ指数を確認する
- 作業時間を早朝や夕方に変更する
- 定期的な休憩時間を設ける
- 日陰や冷房のある休憩場所を確保する
- 水分と塩分を補給できる環境を整える
- 作業者の体調を相互に確認する
- 高温時の単独作業を避ける
体調不良者が出てから対応するのではなく、暑さ指数などを基準に作業を中断する条件をあらかじめ定めておくことが重要です。
農作物や畜産への影響
高温と少雨が続くと、農作物の生育不良や品質低下、水不足が起こる可能性があります。葉や果実の日焼け、受粉不良などによって、収穫量が減少することもあります。
家畜も高温によって食欲低下や体調悪化を起こしやすくなります。畜舎の換気や冷却には、追加の電力と水が必要です。
韓国政府も、農作物や家畜への被害防止を指示しています。ただし、本記事の基準日時点では、今回の猛暑による農業被害の全体像を示す確定的な統計は公表されていません。
電力需要の増加
冷房利用が集中すると電力需要が増え、発電設備や送配電網への負荷が大きくなります。
韓国政府は今回の猛暑を受け、電力需給と電力網の管理を指示しました。停電が起きれば、冷房を必要とする高齢者や医療機関、福祉施設などにも影響が及びます。
猛暑対策では、電力の安定供給と省エネルギーを同時に進める必要があります。企業には空調設備の点検や室温管理に加え、停電時の対応手順や非常用電源の確認も求められます。
都市部のヒートアイランド
建物やアスファルトは日中に熱を蓄え、夜間に放出します。その結果、都市部では夜になっても気温が下がりにくくなります。
熱帯夜が続くと十分な睡眠を取れず、疲労が蓄積します。夜間に体温が下がりにくい状態が続くことで、翌日の温熱疾患リスクが高まる点にも注意が必要です。
韓国の猛暑は日本にとっても他人事ではない
韓国と日本は東アジアの近い地域にあり、北太平洋高気圧やチベット高気圧など、共通する大規模な気象現象の影響を受けます。
韓国で観測された42.5℃という記録は、日本を含む東アジアでも極端な高温への備えが必要であることを示しています。
企業や自治体には、従来の「暑さを我慢する」対応から、猛暑を災害として管理する体制への転換が求められます。
具体的には、次のような取り組みが考えられます。
- 暑さ指数に基づいて作業の中断基準を定める
- 早朝や夕方への作業時間変更を検討する
- 空調設備と非常用電源を点検する
- 高齢者や単独作業者の安否確認体制を整える
- 日陰や休憩場所、飲料水を確保する
- 遮熱舗装、街路樹、屋上緑化などの長期対策を進める
猛暑は人命、農業、物流、電力、医療を同時に圧迫する複合的な環境問題です。
温室効果ガスの排出削減を進める「緩和策」と、すでに起きている高温に備える「適応策」の両方が欠かせません。
まとめ
韓国では2026年8月2日、梁山市で観測史上最高となる42.5℃を記録しました。
北太平洋高気圧とチベット高気圧、強い日射、西風系の風、地形効果などが重なり、記録的な高温につながったと分析されています。慶尚南道では少雨と干ばつも確認されていますが、土壌乾燥の具体的な寄与度は示されていません。
8月4日までに確認された温熱疾患患者は2,441人、推定死亡者は21人に上ります。特に高齢者や屋外労働者などへの影響が大きく、住宅内で発症する高齢者にも注意が必要です。
猛暑は一国だけで完結する問題ではありません。韓国の記録的な暑さを東アジア全体に共通するリスクとして捉え、企業、自治体、家庭が平時から対策を進める必要があります。